吉村秀樹追悼

bloodthirsty butchersの吉村秀樹が亡くなってしまった。
 
書かずにはいられない。
 
僕はいつも、日本で一番好きなロックバンドはbloodthirsty butchersだと言い続けてきたが、
どちらかといえば、
あれもこれも好きだけどブッチャーズが一番好き、
というのではなく、
むしろ
bloodthirsty butchersこそが唯一好きな日本のロックバンドだったのだ。
 
ちょっとでも流行っているものや、嘘くさいものはどうしても毛嫌いしてしまう
ひねくれた嗜好をしている僕だけれど、
ブッチャーズだけは、本当に好きになることができたのだ。
 
僕は日本のミュージシャン、バンドでいうと、
1970年代は荒井由実、
1980年代はEarthshaker、
1990年代は熊谷幸子、
2000年代はbloodthirsty butchers
が好きなバンドだ、
と言い続けているけれど、
 
ことその中で、
2000年代に自分のバンドを始め、
同時代を歩きながら接してきたこと、
そして何度もライヴを見てきたこともあって、
bloodthirsty butchersは
それらの大好きな日本人ミュージシャンの中でも
もっとも身近なバンドだった。
 
46歳、そしてこのタイミング、
とても早過ぎる旅立ち、
それは間違いない。
 
それについての感慨や、考えは、
とても文章にして書けるはずもない。
 
バンドページの英語のコメントには、
言葉の問題もあって陳腐なことしか書いていない、
けれども、
そこに書いたように
彼らはその長いキャリアの中で
決してポピュラーなバンドではなかった
流行したりしたこともない
 
彼らはとてもキャリアが長いベテランなので
売れる売れないにかかわらず、
いつでもそこにいるような気がしたし、
いつまでも居てくれるような感覚も持っていた
 
でも音楽を聞くと
いつでも、これで最後になってしまうんじゃないか
それくらいの芸術的なテンションの高さがあった
 
また、決して売れているわけではないミュージシャンとしての
彼らの歩みは、想像するまでもなく、
大変な道のりであったに違いない。
それは、数年前にリリースされた彼らのドキュメンタリー映画にもきちんと描かれている。
 
よくぞここまで音楽を作り続けてくれた
現実には、その言葉こそがふさわしいのではないか
 
 
2010年にリリースされた「無題 NO ALBUM」は本当に衝撃的なくらいに素晴らしい作品だった。
あの作品を聞いた後、僕はあまりの素晴らしさに「日本のロックはもうこれを最後に聴かない。これ以上のものはもうあり得ないからだ。」とそう決めてしまった。
 
ここ数年、僕は自分のバンドでたびたびアメリカで演奏させてもらっているが、
アメリカに行く前に、ほとんど必ず、ブッチャーズのライヴを下北なり渋谷なり新代田なり見に行って、日本のロックバンドのアイデンティティと、その精神的なルーツというものを、、、、とにかく気合いを入れていたんだよ。ブッチャーズを見て。
 
アルバムごとにほぼ必ず一度はライヴを見るようにはしていたはずだけれど、
最後に見たのは、昨年の初夏あたりの渋谷のワンマンだったか。会場はnestだったと記憶している。素晴らしいライヴだった。文句なしの演奏であり、幸せだった、そしてばっちり泣かされてしまった。
かつて同じnestで+/-{plus/minus}を見てMegalomaniacで泣いてしまったように、
black outで、oceanで、ばっちり泣かされてしまった。
確かに僕は音楽については涙もろい方ではある。
 
 
もうあの吉村さんを見ることができない、
これが一期一会というものか、
でも本当にあの吉村秀樹という人は、
その人となり、芸術家としての、そしてその存在感は、
本当に出会うことができてよかった。
それしか言葉が出てこない。
 
 
幸いなのは、
あの「無題」に続く新作のアルバム、
すでに完成して、リリースを待つばかりだという、
そのタイミングで旅立ってしまった吉村さん、
そこに何を感じたらいいのか、それは人それぞれだけれども
 
不謹慎だが
あの傑作である「無題」に続く、
さらなる傑作を、そして、それを吉村秀樹という超弩級の天才音楽家、天が与えた芸術家の、
その遺作として、聴くことができる
とにもかくにも「無題」に続く新しいアルバムを
聴くことができるという事実に、
喜びを感じている自分がいる
ミュージシャンの性というべきか
そこから何を読み取ることができるか、自分は
 
早過ぎる
とても早過ぎる
まさかこんなに早く吉村秀樹が逝ってしまうなんて
もっと走り続けてくれると思っていた
ずっとそこに居てくれると思っていた
まさかこんなに早く
 
でもそこに何を見出し、
何を感じるか
 
いいことばかりじゃない
何を思い、どういう選択をしていったらいい
自分は
 
 
本当に正直なところ
実の父親を亡くしたときよりも
ショックが大きいくらいだ
 
 
以前も書いたことがある言葉だけれど
もう一度言わせてほしい
 
日本のロックのもっとも素晴らしいもの
それはブッチャーズにこそある
 
もしそれに異論があったとしても
 
ブッチャーズこそは
日本のロックのもっとも美しいものである
 
ここには異論を挟ませない
 
 
そして
bloodthirsty butchers
吉村秀樹
あなたこそが
僕にとっての日本のロックのすべてだった
 
 
 
 
彼らの魅力を伝えることはとても難しい
 
動画もあまりYouTubeに上がっていない
新しいところの楽曲と、
クラシックとひとつずつ紹介するのであれば、
このふたつだろうか
 
“Ocean”
 
“7月”
 
 
僕にとっての
日本のロックが
これで本当に
終わってしまった
 
さようなら
吉村秀樹
bloodthirsty butchers

 

 

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